music&art
<< April 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

FOLKSのGANGAN!!「CAMP FIRE #FOLKS」


約90分のパフォーマンスがすべて終わり、メンバーがステージ袖に消えて客電がついてからも、しばらくフロアの手拍子は鳴り止まなかった。その中腹に立ち、たった今目の前で起こったことを大急ぎで整理する。素晴らしい初ワンマンライブだった。けれど、そんな言葉では追いつかない、胸の奥をぎゅっと掴まれるような何かがあった。

会場に入った瞬間から、振り返ってみる。moleのフロアのある地下へ向かう階段の手すりに、ブルーの電飾が冷たくも柔らかな光を灯していた。これだけで北海道の冬を感じさせる。リハーサル中、メンバーはみんな落ち着いていて、1曲1曲丁寧にサウンドチェックしていた。2月25日にリリースされる2ndミニアルバム『SNOWTOWN』から先行配信中の『冬の向日葵』、いち早くライブで披露した『CARVE OUT』、Ustreamで好評だった禄与くん作詞作曲の『キャスカ』、初公開の『UNIVAS』とたくさん新曲が聴けるうえに、どれもめちゃくちゃかっこいいことに、ただわくわくしていた。リハを終えた郁人くんも「気合い入ってます!」と笑顔を見せていた。

17時30分、開場。『チョウゲンボウの雛』が流れている。リハ中にも曲間のブリッジとして、何度かこの曲を聴いた。確か『Take off』を配信リリースした頃、郁人くんが個人のSoundCloudに上げていた静謐でオーガニックなインスト曲。前回のCAMP FIREのようなDJブースはなく、メンバーが選曲したミックステープがかかることもなく、この奥深いインスト1曲に、FOLKSの世界観が静かに投影されていた。

18時10分、大歓声に迎えられ、記念すべき札幌初ワンマンが幕を開ける。エフェクティブでいて神聖なジェイムス・ブレイクを思わせる『Take off』のあと、郁人くんが「最高の夜にしよう、よろしく!」と叫ぶ。ライブを重ねるごとに輝きと躍動感を増した『HOMETOWN STORY』で会場をあたため、ダンサブルな新曲『CARVE OUT』へ。オートチューンボーカルに、中毒性のあるメインリフがすごくいい。サビでメンバーみんながコーラスするところも。続く、かっち兄ちゃんセクションでは『River』の音圧に圧倒され、『Frenemy』の嘲笑のような不穏なシーケンスにぞくぞくした。道内では初ライブの頃から何度か演奏していて人気の高かった『冬の向日葵』は、音源に近いアレンジでポエティックに生まれ変わった。『UNIVAS』は野口くんのシンセベースが効いたトライバルで壮大な楽曲。彼はいつも以上に笑顔でテンションが高く、ライトの鉄柱によじ登るパフォーマンスも。『Forever』『Two young』と踊れる楽曲が続き、一転して『キャスカ』では荒涼とした力強いサウンドがゆっくりと広がっていく。そして、FOLKSのアンセムと言える『Good-bye, friends 』でフロアを最高潮に盛り上げ、本編ラストの『Everything is Alone』では軽くボーカルエフェクトをかけて、いちばん聴き馴染んだ曲に新しい色合いを加えた。息つく間もなく沸き上がったアンコールの手拍子に迎えられ、郁人くんが目まぐるしい1年を「大事な分岐点をたくさん打ってきました。右往左往することもあったけど、みんなのおかげでワンマンまで辿り着くことができました」と感謝の気持ちを込めて伝える。アンコールはリズミカルな酩酊感が心地良い『パラダイス』、そしてFOLKSの代表曲と言える『Replica』を、アコギメインのシンプルなアレンジで奏で、締めくくった。



ギミックのない、潔いライブだった。これまでのCAMP FIREは装飾やフード、ゲストなどでフェス感を出すことを意識していたと思う。けれど今回は会場の装飾もごくシンプル、ミミアンのオリジナルドリンク“ブルーアイズホワイトドラゴン”の提供もさりげなかったし、ゲストもいない。翌日のクリスマスイブは郁人くんの24歳のバースデイだったけれど、お祝いのサプライズもなかった。純粋な、ワンマンライブだった。そんな中で『チョウゲンボウの雛』が唯一のSEとして、開場から終演までところどころで流れていたのが印象的だった。ちなみにチョウゲンボウはハヤブサの仲間だけれど身体が小さく、素早く飛行するのはあまり得意ではない。だけど羽根を広げると倍以上の大きさになり、空中に停止して獲物をじっくり捕らえるという特殊な能力を持っている。このタイトルの由来を本人に聞いたことはないけれど、なんとなくFOLKSとリンクするところがあるような気がする。

研ぎ澄まされた音楽が際立つライブだった。大きなアレンジ変更をせずにEDM感を強めていたけれど、音を詰め込みすぎていないので分離が良く、ひとつひとつの楽器がよく聴こえる。それによってリフの良さが更に映えるようになったし、キック×ベースの重厚なビートがしっかり支えているのもわかる。そのうえで、すべての曲が北国らしいブライトな透明感に満ちているのがFOLKSだと証明していた。J-ROCKシーンにおいて「わかりやすい」方向に行っていないところもいい。初期に使って封印していたオートチューンを多用していたのは冒険だと思うし、海外インディーロックに肉薄するサウンドをいよいよ推し進めてきたチャレンジ精神に、心躍らずにはいられない。











でも、この日何より強く胸に刺さったのは、郁人くんの姿だった。普段感情をあらわにするのがあまり得意ではない彼が、昂ぶりを隠せずにいる感じ。嬉しさや悔しさ、もどかしさが入り混じったような、形容しがたい表情を何度も見せていた。『Good-bye, friends』の大サビのあと、何かを振り払うように叩きつけるように歌っていたし、ラストの『Replica』では、涙ぐんでいるようにも見えた。バンドがメジャーデビューした最初の1年に、どれほどの期待という重さがのしかかるのか、私たちには想像することしかできない。ひとつだけ言えるのは、音楽を生み出すことは、生きることだということ。それだけの気迫を彼は夏頃からほとばしらせるようになった。特にこの日は、FOLKSを自分が率いていくんだという覚悟が感じられた。そんな中でステージから見た、たくさんのオーディエンスの幸せそうな顔。初めてギターを持った、何も出来ない、何も知らない、ただ希望にまみれた少年の頃に憧れた景色が広がっていて、彼を音楽を愛してやまない普通の青年にさせていたんじゃないだろうか。それは本当に美しい姿だった。


photo:Kaoru Chiba

<セットリスト>

01. Take Off
02. HOMETOWN STORY
03. CARVE OUT
04. River
05. Frenemy
06. 冬の向日葵
07. UNIVAS
08. Forever
09. Two young
10. キャスカ
11. Good-bye, friends
12. Everything is Alone

E1. パラダイス
E2. Replica