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SNARE COVER「音楽はガラクタ集めから始まると思ってるんです」



待ち合わせ場所に現れた彼を目にした瞬間、普通の人とは違うオーラのようなものを感じた。彼の正体はSNARE COVERこと斎藤洸さん。その中性的でハスキーな歌声と作り出す楽曲は、聴く人を魅了し、圧倒してしまうほどの存在感を放つ。
そんな彼が5月15日、約6年ぶりとなるミニアルバム『Birth』をリリースした。
そこで今回、私達は斎藤さんが楽曲を制作していく中で大切にしていることや、2017年夏に放送されたTVアニメ『メイドインアビス』との関わりなど、様々なことをインタビューさせていただいた。


(*斎藤洸さんのご協力のもと、管理者・原田が講師を務めている専門学校の学生2名がインタビューを行いました)

関原颯斗「表題曲の『Birth』は、アニメ『メイドインアビス』で使用された『Hanezeve Caradhina』と同様、最初から造語で歌詞を作ったんですか?」

斎藤洸「そうです。僕は普段からメロデイー重視で曲を作るので、日本語でも英語でもないワードで曲を作るっていうのは、けっこう自然なことで。前回アビスで歌った『Hanezeve Caradhina』という曲のオーダーが来た時、“すごく難しいかもしれませんが、今回の曲は英語でも日本語でもない、この世の中にない言語を使って作ってください”って言われたんですね。でも、それって無茶苦茶なように思えて、僕にとっては都合がよかったんです」

小林海「どんなふうに歌詞を作っていったんですか?」

斎藤「ちゃんとメロディーとかリズムに乗るように意識したのはもちろん、もう全部綺麗にノートに書いて。例えばここのFUはカタカナのフだな、とか。ローソーのところだけTみたいなアルファベットを付けたりとか。全部発音の感覚を起こして、歌詞にしていく。意味はないんですけど、ただめちゃくちゃなものではなくて、本当に形”に起こした言葉なんです」

関原「ライブで歌う時も、毎回同じ言葉なんですか?」

斎藤「同じです。そこもまた重要なところなんですよね。毎回微妙に違うと歌の力が半減される気がする。存在しない言葉なのに、それを存在させるには、それはそれ”でなきゃいけない。自分の感覚で起こした、その存在としてあるってことが自分の定義として重要で。オーダーをくれた音楽プロデューサーも同じことを求めていたし、ちょうどリンクしましたね」

小林「僕は『メイドインアビス』がすごく好きなんですけど、『Birth』を初めて聴いたとき、アビスのイメージにぴったりだと思ったんです。この曲を作った時、そこまで考えていましたか?」

斎藤「『Birth』の原型を作っている最初の頃は、まったく意識してなかったんです。途中、半分くらいで、この曲はもしかしたら、(アビスで劇伴を担当した)ケビン(・ペンキン)がアレンジしてくれたら、絶対に面白くなりそうだなと思って。ケビンに話すと、ケビンは、この曲のアレンジを絶対にやりたいし、もしかしたらアビスの世界観に合うかもしれない…と言ってくれて。不思議なんだけど……こういうのって、後になると本当にそのために作ったみたいに感じちゃうんですよね。僕がメロディや楽曲の芯を作り、ケビンがヴァイオリンとかチェロとかのクラシカルなアレンジ、また、シンセアレンジを加えてくれています。そして、メイドインアビス劇場版総集編後編『放浪する黄昏』のエンディングテーマとなった『reBirth』はケビンがプロデュースし、『Birth』はセルフカバーバージョンとしてアルバムに収録されています。 不思議と寄るというか引き寄せ合うところがあって、もともとケビンがやっていた表現と僕が関わって、影響し合ってお互いが感化し合って1つのものを作り上げたという感じかなと。何か絶対合うなっていう人ってわかるんですよ。そういう時に、予感が当たってコラボが実現した。自分のアルバムにケビンが参加してくれるということが、純粋に嬉しかったです」

小林「他の曲についてですが、『サイクル』の最後、深呼吸で終わるところがすごくエロいというか、色気があっていいですね」

斎藤「ははは! そう言ってもらえて嬉しいですね! エロいという感覚はいろいろな捉え方があるけど、
色気とかそういう意味で、僕の中ではけっこう重要な感覚なので」

関原「僕は『地球』という曲が大好きなんですけど、今作では前回のシングルよりも落ち着いた雰囲気がありますが、そこは何か意識されているんですか?」

斎藤「そうですね。前回の『地球』は打ち込みが多かったんですが、今回のミニアルバムに収録されている『地球』は、ほとんどバンドサウンドになっていて。だから、今回は温かみのある感じに仕上がっているかな。楽器も主張するより、声に寄り添ったアレンジになっているかなと思います」

小林「『朝焼け』の歌詞なんですが、僕が聴いた印象だと曲中の主人公って“たった一回の人生だ 苦しい日々は終わる”で飛び降り自殺してるのなと思ったんですよ。前半の部分も“覚ました” “生きてきた”の過去形だったから、尚更そういうふうに感じたんですが……」

斉藤「すごい! なんか今、世代の感覚の違いを見ましたね。この歌詞でここまで深読みするなんて。ゲームのエンディングだったら表のエンディングと裏のエンディングみたいな感じで。それは間違いじゃなくて、全然いいって感じですね。すごく嬉しいです、そういう解釈をしてくれるの。僕にとって歌詞って、そこまではっきりしたストーリーじゃないんですよね。音楽を作る時、いつもひとつ大きなテーマがあって。『朝焼け』だったら、人間愛とか。例えば、あるアパートに住んでて、スマホ弄って、誰かに思いを馳せて……みたいな、そういう日常的なところで共感するようなメッセージ性ってあまり持っていなくて。自分は何故存在しているの?とか、そういう根源的なところだったりするんです。何のために今存在していて、この意識って何だろう? とか、どうして何もないのに、何かがあったわけじゃないのに、急にふわっと寂しくなっちゃうんだろう?とか。普段人間が生きている中で感じているんだけど、人に言えない感覚だったり、そういうことを伝えたいんですよね。だから、そこまでの解釈をしてくれるのはすごく面白いし、ありがたいです。それを忘れないようにしておきたいなって思います」

関原「僕は『戦火のシンガー』という曲を聴いていて、全体的に平和への願いのようなものを感じました」

斎藤「そうですね。この曲の歌詞は自分が居る国と戦争が続いてる国とのギャップに思いを馳せて書いた曲です。あと、言葉遊びも多い曲で、この歌詞は自分でもけっこう好きですね。ただ、アーティストによっては言いたいことが溢れちゃうみたいな人もいると思うんですが、僕はその逆かもしれません。言葉で伝えたいアーティストとは言えないと思いますね。あと、僕がもうひとつ最近歌詞で気を付けているのは、抽象とメッセージ性のバランスを取るということです。バランスを取らずに、嵌めたい言葉があまりに力強すぎてしまうこともあるけど、自分としては、極力バランスを取るようにしています。僕の音楽はわりと、楽曲的にアンビエントで抽象的に捉えられやすいような気がするんですよ。でもこの曲は、現実の戦争というのを想像できるし、どちらかと言えば歌詞を読んでもらえるメッセージ性のある曲かなと思います」

関原「歌詞はそこまで重要視されないんですか?」

斎藤「重要じゃないわけではないんですが、メロディーや楽曲のほうが優先ですね。もちろん、全部揃ってないとダメなんですが、楽曲を基準にして作るという感じです。僕は、歌の詞って詩じゃなくて、歌詞じゃなきゃダメっていう感覚があるんですよ。歌のための言葉じゃなきゃダメで。この歌詞がよくて、歌っている感覚を求めているわけではないんです。僕の場合はメロディーを邪魔する言葉だったら、言葉のほうを変えます。その言葉の意味合いが薄れたとしても、メロディーのためにうまくあてはまる言葉を選びたい。僕の中では、そのメロディーにあてはまる言葉があるっていうのが重要という定義がありますね」

関原「1曲1曲に対する情熱がすごいように思えるんですが、どういうふうに集中して作るんですか?」

斎藤「ひとつ言えるのは、ものすごい集中力だと思います。自分がいいと思っているものを、人に対して、これが自分だっていう感じで出す表現は、ものすごい集中力と愛情と誰にも負けたくないっていう気持ちがあるのかな? 色々なものが入っていると思うんですけど、生きているとこの先何があるかわからない。その恐ろしさとかを克服するくらい、自分がやりたい楽曲を作るということによって、まだまだ自分はやれるっていう心だったりとか、たくさんの思いが詰まっています。これに関してはどの曲も一緒で、そこまでやらないと得られないと思っていて。それでも、自分にはまだまだ足りないものがあって、もっとこうしなきゃいけない、ああしなきゃいけないっていう気持ちがある中で、自分の出来る限りの全力で生み出す。そうしないとチャンスを逃してしまうんです」


小林「それでも、集中力が切れてしまうことはないですか?」

斎藤「めちゃくちゃありますね。それがいいのか悪いのかわからないんですが、僕の場合は集中力が切れてしまった場合も頑張ってやっちゃいます。何故かっていうと、せっかく自分にとって価値のあるものをやっていたはずなのに、それが急に価値のないものと決めちゃうのは、諦めがつかないんです。人によるとは思うんですが、僕の場合は今までそうなってしまっても、全部頑張ってました。できなくても、他の道を探そうと、なんとか努力して、踏ん張り続けるタイプでした。結局は自分が納得するかどうかだと思います」

小林「僕は行き詰ったらやめてしまうんですけど、どうしたらいいですか?」

斎藤「それはそこで辞めたほうがいいってわかっているからじゃないですか。だから生産性があるってことです。それは自分のスタイルということで、正解なんですよ。もし僕がセミナー講師だったら、たくさんの人たちにうまくいってほしいという気持ちで、そっちを勧めます。ただ自分自身の場合は別で、自分が納得するかどうかの戦いなので、正解っていう感じではないですね。結果的にそれを無駄にしたくないというだけです」

関原「レコーディングやライブの際の、機材のこだわりもありますか?」

斎藤「ライブとレコーディングだと、結構変わってくるんですが、まずはライブだと、ループステーションがないとライブはできないですね。ギターに関しては、とにかく頑丈ということです(笑)。ネックが反りづらくて、若干雑に扱っても大丈夫なもの。サウンドがものすごくよくて、鳴りもよくて、ピックアップがしっかりしているような高くて丁寧に扱わなくてはいけないギターより、頑丈なものを選びます。マイクはノイマンというメーカーのマイクが、自分の声に合うので、自分でも所有しているし、レコーディングのときも使っています。ライブの時のエフェクターは基本ディレイしか使っていないです。空間系のものはルーパーの中で少しいじることができるから、最低限のものしか使わないですね。
レコーディングでは、パソコンの中でプラグインというのがあって、中で全部音を調整出来てしまうんです。なのでその中で、空間系の音をたくさん使います。ボーカルだったら、リバーブ。レコーディングや音源ではものすごく色々なものを使います」

小林「レコーディングの際には、音源や打ち込みは使いますか?」

斎藤「そういうものを使わないストイックなタイプに思われがちですが、使いますね。音楽を作るうえでいいものならなんでもいいという感じです。勉強すればするほど、なんでもいいと思えるようになりました。何をしてもそこに自分がいるんで。僕は音楽ってガラクタ集めだと思っているんです。ネタは最初ガラクタでもよくて、それが最終的にすごいものになって自分も納得して、聴く人がこのアレンジっていいよねって思うのがゴールなんで、正直ネタはなんでもいいんです。だから安いギターでもいいし、机をたたいた音をサンプルにしてもいいし、音源も全然使いますし、自分がやりやすいように表現しています。無理して全部自分でやっていますっていうのを表現するために、人に伝わらなかったら意味がないので、なるべく客観視はしたいです。結果的にいいものにしないと意味がないんで。今回のミニアルバムではあえて、ベースとリズムに関しては生を少なくして、音源の割合を多くしました。その代わりギターはアコースティックを多くしています。エド・シーランのアルバムで『÷(ディバイド)』っていうのがあるんですけど、その作品に近いところがあるかもしれないです」

関原「最後に、斎藤さんの曲の大きなテーマは何ですか?」

斎藤「絶望的なことは書かない、これだけは言えます。ずっとそうだったわけではないんですけど、今の僕の音楽は必ずポジティブです。人を惑わせたり、迷わせたり、怖がらせたり、ネガティブなことを感じさせるために音楽を作っているわけではないということだけは、はっきり言えます。それは聴いてくれる人のためはもちろん、自分のためでもある。音楽は楽しいものだし、スリルのあるものだし、遊びでもあるし、本気でやるものでもある。だからこそ、ポジティブな音楽を作っていきたいですね」
 

インタビュー:札幌アニメ・声優専門学校 小林海/関原颯斗

構成・文:関原颯斗/白田智久/盒尭狷/武田絵里/小林海/阿部真里亜/高山史織

文責:原田早知

 

 

 

 


Mini Album『Birth』

UXCL-205 ¥1,600+TAX

01.Birth

02.戦火のシンガー

03.朝焼け

04.サイクル

05.虹のリード

06.地球

07.愛してる
 

http://www.snarecover.com/

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