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かせのまさよ 「楽しいんだか、悲しいんだかわかんない状況だけど、一生懸命やってる」


札幌在住の宅録女性ミュージシャン、かせのまさよが1年8ヶ月前に発表した1stアルバム『猫も杓子も』が4月30日、Moorworksより全国リリースされた。プログラミングの上に琴やギター、鈴やタンバリンなどの素朴な生楽器と、時に哲学的な言葉を織り交ぜた生真面目な混沌の詰まったポップミュージックは、無邪気なようで奥行のある聴き流せない作品になっている。まだ彼女の音楽に触れたことのない人は、ぜひ聴いてみてほしい。

―――まずは、『猫も杓子も』全国リリースおめでとう! 改めて聴いて、『情報操作』がいちばん好きだなと思いました。

「わー、ほんとですか? うれしい〜。あの曲いいって言ってくれる人、あんまりいないんです。林立夫さん(ex.荒井由美、細野晴臣、ティン・パン・アレイ)は言ってくれたけど」

――ポップでシュールでコミカルなんだけど、最近のアニソンとかボカロとは違う、ちょっと80sっぽい感じがいいなって。

「うんうん、私が聴いてきてるのはそっちですしね」

――ああいう曲の中に『311』みたいなシリアスな曲が入ってるのもいい。

「ごった煮(笑)」

――あと、ちゃんかせの作るメロディーはどこか少し悲しい気がする。

「言われます! “いつも影がありますよね”って。自分でも思いますね。ライブをあんまりしないんですけど、ピアノに向かうのがトラウマになっちゃってて。母親がピアノの教師をやっていて、子どもの頃、独房みたいな防音室で練習して、アカデミックな厳しい先生に教わってたから。ピアノを好きな部分と嫌いな部分、半分半分で、へんな感じ」

――私が初めてちゃんかせと会ったのは3年くらい前だけど、あの頃はまだ自分のための曲作りを始めたばっかりだったと思う。私はなぜか興味を持ったのね、あなたに。

「あのとき、さちさんが“音源作ればいいのに”みたいなこと言ったの大きかったんですよ。そうだよなって。ほんとぐずぐずしてるから。他にも何でやらないんですかって言ってくれる人がいて。そういうふうに言ってくれる人がいたから、作ったのはあります。なかなか動けかなったんですよね、下手なもん作ったら恥になる、みたいなのが大きくて。名前変えて私じゃないって出せばいいのにそれも出来ず。自分は自分って認められたいっていうのは、子どもの頃からすごいありますね。うまく立ち回れないから。“私はこういう人なんです”って言いたいっていうのはずっとあります」

――作品のテーマみたいなものはあった?

「テーマっていうか、音源作るとき、何がやりたいのかなって考えたときに全部やりたいなと思って。あと、コラボレーションがしたかった。私のいちばん根幹にあるのは“仲良くしたい”なんですよ、違う人たちと。それはアメリカに住んで、“言葉の通じない外人”って言われていじめにも遭った経験が大きい気がする。アメリカにはいろんな種類の人がいるから。そういう中でみんながお互いを尊重し合うっていうのがすごい理想だなと思って。もしかしたら自分を許容されたいって気持ちに繋がるのかも知れない。期待に応えないと愛されないっていうのがあったから」

――アメリカに住んでたのは、いくつのとき?

「5歳〜6歳のとき、キンダーガーテンっていう幼稚舎があって、そこに半年いたあと小学校1年生の手前の子たちが入る教室に半年行きました。短い間だったけど、そこでの経験はすごく大きい。洋楽すごい聴いてて。娯楽がそれしかなかったから。アニメとか観ても何言ってるかわかんないけど、音楽はMVを観てるだけでゲラゲラ笑えるようなのもあって。エンヤの『Orinoco Flow』がめっちゃ売れてて。すごい観てた。あとはBobby McFerrin の『Don't Worry Be Happy』、あれが5歳児の心に沁みたわけですよ。そういうのしか記憶にないな」

――言葉がわからなくても、リズムとかメロディとか楽器の音とかでちっちゃい子でも楽しいんだよね。

「そうだと思います。日本語だってよくわかんない、まさよのまを逆に書いてるような時代だけど、音楽聴いてわーい!みたいな(笑)」

――(笑)『猫も杓子も』の曲は、どんなふうにして作っていきましたか?

「もともと8小節なり16小節の破片がありましたね、これは曲にできるな、みたいな。そういうのがいっぱいあって、それにサビ付けて。結局、4か月5か月くらいで作ったのかな。『311』は人にあげようと思ってた曲。曲だけ先にあって、めっちゃJ-POPができたな〜、でもこのメロディーにはいろんな感情が渦巻いてる歌詞しか合わない気がするけど書けないと思って放っておいたんですが、3.11があって、すぐに言いたいことが出てきて」

――演奏は、ほとんど打ち込み?

「打ち込みです。『Utakata』ってインストに入ってる、猫の声とか鈴とか木の実の音は実際に録ってますけど」

――鍵盤は?

「鍵盤は全部自分で弾いてます、MIDIで。あと、『澄空』のドラムロールのスネアは生ですね。中古楽器屋でスネア買って。でっかい音出るんですけど、自分の部屋で。完全なベッドルームミュージックですね」

――知り合いのミュージシャンが参加した曲もあるよね。

「それは最後の最後ですね、みんなが関わったのは。『いざ生きめやも』のキーボードは下手うま感を出したかったから、わざと下手くそに弾いて。曲が全部出来た状態でTomitaくんにベースとギターとマンドリン、ドラムを打ち込みで入れてもらってカッコよくなりました。9曲目のほうの『再生ボタン』は、リミックスを任してみようと思ってtkrismくんに渡して。おもしろい感じになったから良かったです」

――歌詞が哲学的なのもいい。『311』以外の曲は、何のこと言おうとしてるのかはっきりわからないかも。

「そうですよね。まず本人が混乱して書いてるから。でも私、そういう歌詞わりと好きだったんで。CHARAもよく一行ごとに主語が変わって誰が言ってるのかわからない、何を言いたいのか本人にしかわからないみたいな歌詞書きますよね(笑)」

――うん。今の日本のポピュラーミュージックは何が言いたいのかわからないのはいけないことみたいな風潮があるけど、どうしてなんだろうっていつも思う。だって、みんなよくわかんないで生きてるじゃない?“自分はこういう状態です”ってことを正確に把握してないし、常にいろんな色の感情とか感覚が入り乱れて暮らしてる。

「そう、まさにそうですよ」

――そこを一色のものとして、“この人はこういう気持ちでこういうことを伝えたいんです”っていうのを明確に説明させるのは、少し乱暴なような気がする。作り手がいろんな感情や感覚に振り回されてるとしたら、ちゃんと自分で制御しなくちゃ危険だけど。

「それですよ! それが生きにくさなんですよ。いちいち説明しなくちゃいけなんですよね。それはすごく辛いことで。一字一句これは何だ?って言われたら、行場がないですよね」

――それって何らかの潔癖さじゃなくて、視聴者に対してわかりやすい説明書を用意しろってことだよね。そうやってリスナーの想像力や洞察力を広げるチャンスを奪ってる。

「私、よく考えたらフランス系の人好きなんですよね。ドビュッシーもそうだし、アラニス・モリセットもフランス系なんですよね。フランス人が私の概念をかなり壊した感じがあって。グレーな感情はそのままグレーです、って言うんですよね」

――フランス映画とか、ぜんぜん意味わかんないよね。

「浮気普通だし不倫普通みたいな、正々堂々グレーです、みたいな(笑)。楽しいような、悲しいようなものを良しとするのがすごいいいなぁって。これでいいんだなって思ったんですよ、楽しいんだか、悲しいんだかわかんない状況だけど、でも一生懸命やってるっていう。私も歌詞の意味がわかんないってよく言われるんですけど。意味がわかったほうが商売はうまくいくと思うんですけど」

――そもそも商売がしたくて曲作ったわけじゃないものね。この作品は、ちゃんかせにとって、どんなものになりましたか?

「うーん…、宝箱ですかね。オルゴールのフタが開いて、妖精の人形がくるくる回ってて、みたいなものにはなった。そういう状態を、いつだって自分の言いたいこと言っていいし、したい音にしていいっていう部屋をずーっと求めてたと思うんですよ。これが自分の部屋であって、だんだんと自分の思い描くものになってきた感はありましたよ、確かに。さっき、さちさんが“自分のための曲作り”って言ったけど、最近、誰かのために何かのためにばっかりになってた。私、そこまでの高い魂に行けないんですよ。でも自分のためでいいんだなって」

――誰かのためって素晴らしいし私もそうしたいと思うけど、表現活動の出発点の多くは自分のためだと思うし、自分のために曲作ってますってぜんぜん恥ずかしいことじゃないと思うんだよね。むしろ、その人が自分のために作った音楽がいちばん刺さる。私、デモテープ聴くのが好きで。エゴの塊を聴けるのがいい。そこに力を感じるし、打たれるし、共鳴する。

「そうかも。なんか最近薄っぺらいんですよ、歌詞書いてはくるくるポイしてるんですけど、ぜんぜんいいと思わないな〜って。そういうことなんですよ、自分のために書いてないからなんだ。バンドもやりたいって思いながらなかなかメンバーが見つからないんだけど、それも流動メンバーでいいんじゃないかなと思えてきて。いろんな人が出たり入ったりしてる集団で。なんでも固く考えないで、ぐらぐらした感じでいいと思う」


かせの・まさよ
札幌在住の宅録女性ミュージシャン。プログラミングの上に乗る琴やギター、鈴やタンバリンなどの生楽器と、時に哲学的な言葉を織り交ぜ音楽に紡ぎ出し、混沌で唯一無二のポップ音楽を奏でる。’12年7月、自主レーベル「pino pono records(ぴのぽのれこーど)」から発売された1stアルバム『猫も杓子も』が ’14年4月30日に全国リリース。毎週土曜23時〜24時までレギュラーラジオ番組「鮨ラジオ」放送中。


『猫も杓子も』
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1. 再生ボタン
2. いざ生きめやも
3. 情報操作
4. オーディオトラベリング
5. 簡単です。
6. 澄空
7. Utakata (Instrumental)
8. 311 ~2011年3月30日ver.~
9. 再生ボタン~revival~




http://kasenomasayo.net/

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