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FOLKSのGANGAN!!「FOLKS"In Bloom"Tour 2015 @Sound Lab mole」


何も言えない。言葉にならない。FOLKS"In Bloom"Tour 2015ファイナル札幌、この日のライブを体験した多くの人が同じことを感じたんじゃないだろうか。満員のフロアから生まれる熱気に満ちた拍手と喝采の中、メンバーがステージ前方に並んで肩を組み、満面の笑顔で「ありがとうございました!」と頭を下げた時、そこにいた全員が幸せな思いに満たされていたはずだ。なのに、ただ良かったとか楽しかったでは説明できない、こみ上げてくる深い感情に戸惑いすら覚えた。ひとつだけ、確かなことがある。見たことのないFOLKSを今、目撃したということだ。

それだけ、今回の初ワンマンツアーは彼らにとって特別だった。ちょうどメジャーデビュー1周年を迎えたあとのGWに名古屋、大阪、東京、札幌の4都市でワンマンライブを行うというのは、バンドとして順当な流れだろう。けれど出発前から、それ以上と思える気合いと心の揺れをフロントマン岩井郁人はレギュラーラジオやツイッター上で隠さなかった。今まで言葉で多くを語らなかった彼が、なんだかいつもと違う。それは「ただならぬこと」だと予感させた。

5月15日、Sound Lab mole。19時のほぼ定刻通り、誕生をイメージするコズミックで壮大なエレクトロのSEと歓声と共にメンバーが登場。「ただいま、北海道!」郁人くんの一声で瞬時にホームの一体感が生まれる。『Everything is Alone』『HOMETOWN STORY』『Two young』と疾走感のあるフレッシュでアップテンポなナンバー3曲をいきなり畳みかけ、オーディエンスを否応なしに昂ぶらせる選曲は圧巻。続いて嵐のような猛々しいSEの中、禄与くんがギターを手にステージ前方へ出て、郁人くん、豪利くん、野口くんの4人が横並びになっての『River』。そこから徐々に雲行きは怪しくなり、「暗闇を裂く様に 優しく破れた愛の その向こうへ」と郁人くんがアカペラで歌いあげ、『FOREVER』と思わせて『UNIVAS』にすり替わるというトラップは心憎いばかり。メンバー全員が絶えずハンドクラップを促すのも、1曲終わるたびにフロアから歓声が起こるのも、ポーカーフェイスを崩さないことの多い郁人くんが『You're right』『キャスカ』でも、感情をあらわにして歌っていることも、普段おとなしいFOLKSのライブでは珍しいことだ。そして、安定感を増して骨太になったメンバーのバンド・アンサンブルがしっかりとフロントマンを支えている。











FOLKSの音楽は不思議だ。フロアにいる全員と一緒に楽しめるのはもちろんだけど、1対1で深くのめり込んでいくような親密さも味わえる。それはメインソングライターである郁人くんがもともとクラブに出入りして踊りまくるような開放的な若者ではなく、自室でヘッドフォンをして世界中の音楽を貪るように取り入れ、理想の音楽を描き出すことからスタートしたプロジェクトだからだろう。1曲の中に光と影がかならずあり、思うままに行き来できる。だから、あまり人付き合いの得意じゃない、シャイで偏屈を自認するタイプでも気持ち良く身体を揺らせるし、勇気を出して初めてひとりでライブハウスに来た若者も孤独にさせない。

「すごい気持ちいい、最高です! 改めてここがホームだなと皆さんのおかげで思いました」という郁人くんのMCを挟んで、サポートドラムの椿原くんもステージ前方へ出て横一列になり、アコースティックでの『フレネミー』へ。続く『パラダイス』の間奏でステージにケーキが運び込まれ、5月10日、11日と立て続けに誕生日を迎えた禄与くん、豪利くんのバースデーサプライズが。なんとミミアンまで知らなかったのだとか。その後は、郁人くんがひとりステージに残り、完全アンプラグドで『それぞれの日々へ』を弾き語る。いつしか情感を深めた哀しみを含んだ温かい声に、フロアからひときわ大きな拍手が湧き起こった。そんな静かな空気を裂くように心臓音が焦燥感を煽るFOLKS HOUSE SESSION のオープニングSE『Discovery』が流れ、『CAPITAL MORNING』のイントロが始まる。それまでの苦悩から解き放たれたような、泣けてくるほどキラキラした世界観へ一変。この転換がものすごくいい。『CARVE OUT』でフロアの熱気は更に高まり、『Good-bye, friends』では禄与くんがフロアにタムを持ち込み、観客もリズム隊として共演するスペシャルセッションを交えて、全身全霊の大サビで圧倒的な本編ラストを迎えた。















アンコールでは、このツアーのために作ったという前進するシンセのリフが印象的な新曲『any time,any way』を演奏したあと、郁人くんが今回のワンマンで道外はチケットをソールドアウトできずくやしかったこと、ここまでの過程でポジティブになれない時期もあったことを真正面から語る。「このツアーで花は咲きませんでした。今はまだ、種蒔きの最中です。でもこのツアーで地に足が着いたと思う。これから全国に種蒔きをして大きな花を咲かせたいです」。そしてまたの再会を誓って歌われた『Replica』は、今まででいちばんクリアな美しい音で、最後の力強い「オーオーオー」という叫びが心の奥深くを射抜いてどこまでも響き渡った。



約1時間半、結成から現在までの有り様がリアルに再現された、まさにライブだった。この2年間、手放しでハッピーな時間はほとんどなかったのかも知れない。おそらく自問自答と、葛藤の連続だったのだろう。郁人くんがツアー初日の名古屋に向かうフェリーの中で作ったという入場SE『Spring Out』も、曲間、曲中に加えられたブラスシンセの音もすべて、心の中の激しい波風をそのまま表現したような荒々しいものだった。また偶然の産物を柔軟に組み込みながらツアーを進めてきたという意味でも、ライブだった。観客に禄与くんのタムを叩いてもらうセクションはツアー前に出演した『VIVA LA ROCK 2015』での彼のアドリブを取り入れたのだろうし、『それぞれの日々へ』を完全アンプラグドで演奏したのも、大阪での機材トラブルを逆手に取ったものだろう。札幌ワンマンの前日に放送したFOLKS HOUSE SESSIONで3月に行われた夢創館でのデビュー1周年記念イベントのドキュメンタリーを再配信し、「その場所に行ってちゃんと届けたい」「ライブに自信がない」と郁人くんが率直に話している姿を流したのも意味深いことだ。たった4公演かもしれないけれど、その時間を彼らは濃密に懸命に生き抜き、驚くほどたくましくなった。

FOLKSの音楽は邦ロックのメインストリームに台頭している拳を振り上げて盛り上がるタイプのものではない。海外インディ色の強いサウンドと日本語詞をしっかり聴かせる歌ものの組み合わせというのも稀だ。リスナーに共感を誘う歌詞でもMCでも、キャラクターでもない。ひたすら自分たちがかっこいいと思う、自分たちの音楽で勝負することを貫いてきたバンドだ。譲りたくないスタイルやポリシーを守りながら、メインストリームに対抗していくのは生易しいことではなかっただろう。そういった葛藤をどこかに引きずったままステージに立つ郁人くんを幾度か見た。ずっと外の様々なものと闘っているのだと思っていた。だけどこの日、それだけじゃないと気づいた。彼は自分の中の殻を破れずに自分と闘っていたんだと思う。誰が見ても恵まれた容姿と才能を持ちながら、気づくとなぜか誰かをサポートする立場になっている。子どもの頃から野心が強かったはずなのに、人を押しのけて自分を通したり、フロントマンとしてデビューしてもなお自分の世界に陶酔したりする「ふてぶてしさ」がない。『Two young』の歌詞の中に「日向と影の縫い目に沿って」というとても文学的な一節があるけれど、光の自分と影の自分を繋ぐ縫い目が切れてバラバラになってしまわないように、いつも理性でコントロールしてきたのかも知れない。それは彼ならではの慎み深さであり美しさであり、歌やステージ上から伝わる誠実さや包容力となっていたのは確かだ。でも、そこにもどかしさを感じていたのも間違いないはず。飛び出したくてうずうずしている膨大なエネルギーがあることは、彼が初期に作った音源を聴けば明らかだ。けれどそれは迷いの中で抑えられ、形を変えていった。

その行場を失ったエネルギーが、ついに今回のツアーで大爆発した。やりたい音楽を思いっきりやる。自分たちの音楽を愛してくれるリスナーに対して、しっかり自分を開く。真っ正直にさらけ出す。バンドのために、自分が前に出てメンバーを率いていく。それはすごく怖いことでもあったはずだ。ツアー直前、彼は人生の中でいちばん弱くて強い状態にあったのかも知れない。だから初日の名古屋で待ちかねたファンの嬉しそうな顔を見た瞬間、すべてが溶けたのではないだろうか。自分たちがやっている表現の向こうにはいつでも待っている人がいて、偽りのない笑顔と温かい体温がある。このツアーで彼らが思い描いた花は咲かなかったのかも知れない。けれどフロントマンとしての岩井郁人は、バンドとしてのFOLKSは、誰をも幸せにする奇跡の花を咲かせたはずだ。


photo:Kaoru Chiba、Ai Yakou


<セットリスト>

01.Everything is Alone
02.HOMETOWN STORY
03.Two young
04.River
05.FOREVERF〜UNIVAS
06.You're right
07.キャスカ
08.フレネミー
09.パラダイス
10.それぞれの日々へ
11.CAPITAL MORNING
12.CARVE OUT
13.Good-bye, friends

E1. any time,any way
E2. Replica