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FOLKS『BLUE&YELLOW』 “孤”まで潜り込んで生まれたのであろう、音と言葉。


今までと違う。音数はかなり抑えられているし、キャッチーなシンセ・ポップもない。FOLKSらしい華やかさは鳴りを潜めている。けれど、やけに胸に迫るものがあって離れがたい。全5曲、抜群に良質なメロディのミディアム・チューン2曲とジェイムス・ブレイクを彷彿とさせる空間への美意識の高い内省的な2曲に、岩井豪利作曲のサイケデリックでオルタナティブなナンバーが橋渡しをする。タイトルどおり二面性がくっきりと現れている。

もうひとつ、これまでサウンド志向が強く、“君”や“僕ら”を歌うことの多かった岩井郁人が今回は“僕”、ひいては“本当の僕”をメインに歌っていることにも気づく。このテーマは初夏に行われた初ワンマンツアーなくしてありえなかったのではないか。どちらかといえば言葉で自分を語ることに消極的だった彼が、初めて言葉で自分を伝える、自分を見せるということに自発的になった意味深いツアーだったのだ。
その時の経験が色濃く投影され、こんなにもパーソナルな作品が生まれたのだと思う。それは誰より、自分自身のための作業だったのかもしれない。

サウンドはいっそう鋭く研ぎ澄まされ、こわいくらい美しい。なのになぜか今までより、“近い”感じがするから不思議だ。“近い”と言っても、私生活での出来事を赤裸々に綴っているわけではない。日常の喜怒哀楽の奥にある極めて“孤”の領域まで潜り込んで生まれたのであろう、音と言葉。例えるなら、いつもどおりの生活のふとした隙間にとつぜん破滅や死の気配を嗅ぎ取ってしまう、非日常の覚醒に似ているのかもしれない。

それは年令性別関係なく誰もが生まれながらに持っている感覚だ。だから“こわい”んだけど、深いところで“わかって”いる。でも、深いところだから、共有しにくい。だからこそ、自分をすっぽり受け入れられたような、自分ひとりのそばで歌ってくれているような親密さを感じられるのではないだろうか。
 
そして、この感覚を誰より共有したがっていたのは、岩井郁人自身だったのかも、と思う。彼の生み出す眩いまでに美しいサウンドのどこかにかならずある“こわい”部分。そこを徹底的に突き詰めて音として体現できたとき、死の気配は快楽に変わる。たとえ一瞬だったとしても。そんなことを想像させるくらい彼から生まれる音のひとつひとつにはメッセージがあるし、ほとばしる熱量は計り知れない。そしてどんなにダークな楽曲であったとしても、王道感のあるポップ・ミュージックから逸脱しない才能。『BLUE&YELLOW』は、その天性を真正面から提示して見せた、素通りできない作品だ。



『BLUE & YELLOW』
2015.10.21on sale
KSCL-2655 ¥2,000(tax in)
*北海道地域限定店頭特典(先着):2方背スリーブケース


01. BLUE & YELLOW
02. 夜の砂漠と月の光
03. D2R
04. 六畳銀河
05. 裸足のシンデレラ







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